まとめ
- 周期表第12族に属し、常温(20℃)で液体として存在する唯一の金属元素。
- 熱による体積変化が一定で線形であるため、精密な温度計の指示薬として広く利用されてきた。
- 金などの貴金属と容易に合金(アマルガム)を形成する特性を持ち、古代の鍍金技術に不可欠であった。
解説
水銀は融点が約マイナス39℃と極めて低く、密度が高い重金属です。物質は一般に加熱すると膨張し、冷却すると収縮しますが、水銀は温度変化に対する体積変化の割合が安定しているという物理的特性を持ちます。理科の実験などで用いられるフラスコ内の液体の膨張を観察する際、水は4℃で体積が最小になるという特殊な性質を持ちますが、水銀はより素直な熱膨張を示すため、計測機器に適しています。
化学的には、他の金属を溶かし込んで「アマルガム」と呼ばれる合金を作る性質が重要です。この性質は、古代日本の国家プロジェクトである東大寺大仏造立において決定的な役割を果たしました。銅で造られた大仏の表面に、金と水銀のアマルガムを塗り、加熱して水銀だけを蒸発させることで、表面に金だけを定着させる「金メッキ(鍍金)」が行われたのです。この際、伊勢や阿波といった産地から大量の天然水銀が集められました。
みなさんは、ふだん使っているスプーンや10円玉などの「金属」を思い浮かべてみてください。どれもカチカチに固まっていますよね。でも、世の中にはたった一つだけ、ふだんの温度で「液体(ドロドロの水のようす)」のままでいる不思議な金属があります。それが「水銀」です。
水銀は、温められると決まった割合でふくらむ性質があります。そのため、昔から温度計の中身として使われてきました。また、金などのほかの金属を溶かしこむ特別な力を持っています。この力を利用して、大昔の日本人は奈良の東大寺にある大きな大仏を、キラキラの金色にぬりあげたのです。
ただし、水銀が蒸発して空気中にまざると、体に悪い影響をあたえることがあります。とても便利な物質ですが、あつかいには注意が必要な、少しこわい一面も持っています。
水銀は、英語で「Mercury(マーキュリー)」と呼びます。これはローマ神話に登場する足の速い神様の名前です。液体でコロコロとすばやく動く水銀のようすが、神様の動きに似ていることから名付けられたといわれています。
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