- 農作物の栽培や家畜の飼育、農地の維持管理のために、河川や地下水から人工的に供給される水のこと。
- ダムやため池、用水路などの水利施設を通じて供給され、特に日本の稲作において極めて重要な役割を果たす。
- 食料自給率の向上や、かつての米の生産調整(減反政策)といった国の農業政策とも密接に関わっている。
解説
かんがい用水は、農業生産の安定と向上を図るために不可欠な資源です。自然の降雨のみに依存するのではなく、人工的な施設を用いて必要な時期に適切な量の水を供給することで、作物の生育をコントロールし、干ばつなどの自然災害から農地を守ります。日本では古来より稲作が基幹産業であったため、全国各地に「ため池」や「用水路」といった高度な水利ネットワークが築かれてきました。
また、かんがい用水の役割は単なる給水に留まりません。水田に水を張ることで土壌の温度を一定に保ち、雑草の発生を抑制する効果もあります。しかし、1970年代から2018年まで続いた「米の生産調整(減反政策)」により、作付け面積が制限されたことで、これら水利施設の維持管理や水利権の調整が現代農業における重要な課題となっています。
コラム
日本の食料自給率を分析する際、かんがい用水の基盤となる農業インフラの重要性が浮き彫りになります。現在、日本の食料自給率は「カロリーベース」が「生産額ベース」を大きく下回る傾向にあります。これは、輸入に頼る小麦や油脂類の消費が増える一方で、国内で生産される高付加価値な野菜や果物の割合が高いためです。
さらに、かんがい用水は「多面的機能」を有している点も注目されます。農地を通じて地下水を蓄える「地下水涵養」や、洪水を一時的に防ぐ「国土保全」、さらには地域の景観維持や防火用水としての役割など、農業生産以外の面でも社会に大きく貢献しています。