北海道東部の根室振興局と釧路総合振興局にまたがる、面積約5,000平方キロメートルに及ぶ日本最大級の台地。火山灰に覆われた土壌と、夏季に発生する海霧による冷涼な気候を背景に、大規模な機械化酪農が展開されている地域である。
解説
根釧台地は、主に摩周・阿寒などの火山から噴出した火山灰(シラスなど)が堆積して形成された広大な原野である。この土地は酸性が強く、保肥力に乏しいため、かつては農業振興が極めて困難な地域とされてきた。気候面では、夏季に千島海流(親潮)の上を吹き渡る湿った空気が冷却されて発生する「海霧(移流霧)」により、激しい日照不足と低温に見舞われる。このような厳しい自然条件により、古くから試みられた稲作や畑作の開拓は失敗を繰り返してきた歴史を持つ。
1950年代以降、この地は「適地適作」の考え方に基づき、冷涼な気候に適した牧草栽培と乳牛の飼育を主軸とする酪農地帯へと舵を切った。特に世界銀行の融資を受けた「根釧パイロットファーム」事業などの国営開拓により、大型機械を導入した欧米型の大規模経営が確立された。現在では一戸あたりの経営面積が本州の農家を遥かに凌駕しており、日本を代表する生乳の供給拠点としての地位を築いている。
コラム
根釧台地の景観を特徴づけるものに、一辺が約3kmに及ぶ「格子状防風林」がある。これは冬の地吹雪や夏の冷たい霧から牧草や牛を守るために計画的に植えられたもので、宇宙空間からもその幾何学的な模様を確認することができる。北海道の厳しい自然と共生しようとした開拓の知恵が、現在も大規模な文化的景観として維持されている。