- トキ
- ペリカン目トキ科に属し、学名「ニッポニア・ニッポン」を冠する日本の特別天然記念物および国際保護鳥
- 明治以降の乱獲や農薬による環境悪化で日本産の野生個体群は絶滅したが、現在は中国由来の個体による人工繁殖と放鳥が進んでいる
- 新潟県佐渡島を中心に、農業と自然環境の共生を目指す「世界農業遺産(GIAHS)」の象徴的な存在として保護されている
- 冬期湛水や減農薬など、トキの餌場を確保する「生きものを育む農法」が地域ぐるみで実践されている
解説
トキはかつて日本全土に広く分布していましたが、明治時代の乱獲や、戦後の高度経済成長期における農地開発、農薬の大量使用によって急速に個体数を減らしました。2003年に日本産の最後の個体「キン」が死亡したことで日本産の系統は絶滅しましたが、現在は中国から贈られた個体を基に人工繁殖が行われ、佐渡島を中心に野生復帰が進められています。
佐渡島では、トキが野生で自立するための環境整備として「生きものを育む農法」が推奨されています。これは農薬や化学肥料を減らすだけでなく、冬の間も田んぼに水を張る「冬期湛水(とうきたんすい)」や、田んぼの脇に小川(江)を作ることで、一年中トキがドジョウやカエルなどの餌を探せる環境を維持する取り組みです。こうした活動が評価され、佐渡は「トキと共生する佐渡の里山」として、石川県の能登とともに日本で初めて世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。
| 項目 |
高度経済成長期(衰退期) |
現在の保護活動(再生期) |
| 農業のあり方 |
効率重視・農薬や化学肥料の多用 |
環境配慮・生きものを育む農法 |
| 餌場の環境 |
乾田化やコンクリート護岸による消失 |
冬期湛水やビオトープによる確保 |
| トキの状況 |
野生個体群の絶滅(2003年) |
人工繁殖個体の放鳥と野生定着 |
コラム
中部地方では、佐渡のトキ保護以外にも、地域の自然と伝統を守る取り組みが盛んです。石川県の能登半島では、後継者不足に悩む棚田を維持するために「棚田オーナー制度」が導入され、都市住民が景観保存を支えています。また、静岡県では茶の品質を高めるために周囲の草を刈って茶園に敷く「静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法」が続けられており、これらも環境と生産を両立させる重要な文化として継承されています。これらの取り組みは、単なる生物保護にとどまらず、持続可能な地域社会のモデルとして注目されています。