憲法改正の発議とは、日本国憲法の改正案を国会が可決し、主権者である国民に対してその承認を求める提案を行う手続きのことです。日本国憲法第96条に規定されており、憲法改正プロセスの第一段階にあたる極めて重要な法的行為です。
解説
憲法改正の発議には、衆議院および参議院の各議院において、総議員の3分の2以上の賛成が必要とされます。ここで注意すべきは、基準が「出席議員」ではなく「総議員」である点です。欠席者や棄権者も含めた全議員数を分母とするため、通常の法律案の議決(出席議員の過半数)や法律案の再議決(出席議員の3分の2以上)に比べて、はるかに高いハードルが設定されています。
また、国会における意思決定において「衆議院の優越」が認められない点も大きな特徴です。法律案や予算の議決とは異なり、憲法改正については衆議院と参議院が完全に公平な立場にあります。そのため、たとえ衆議院で3分の2以上の賛成を得たとしても、参議院で否決された場合には、その改正案を国民に提示することはできません。このように厳格な手続きが定められているのは、憲法が国家の最高法規であり、時の政権の都合によって容易に変更されるのを防ぐためです。
コラム
国会による発議がなされた後は、60日目から180日以内に行われる国民投票によって、改正の可否が最終的に判断されます。この国民投票において、有効投票の過半数の賛成が得られたときに、憲法改正が成立します。成立した改正案は、天皇が「国民の名で」直ちに公布することとなっています。
こうした改正手続きが通常の法律よりも厳しく定められている憲法を「硬性憲法」と呼び、逆に法律と同様の手続きで改正できる憲法を「軟性憲法」と呼びます。日本国憲法は典型的な硬性憲法であり、1947年の施行以来、一度もこの発議が行われた実例はありません。