紀伊山地は、紀伊半島の大部分を占める急峻な山岳地帯であり、日本列島の背骨の一部を成すとともに、国内屈指の多雨地域として知られています。
解説
紀伊山地は三重県、奈良県、和歌山県の3県にまたがり、標高1,000mから2,000m級の山々が連なる険しい地形が特徴です。気候面では、南方からの湿った空気が山地にぶつかることで上昇気流が発生し、大台ヶ原周辺を中心に年間降水量が4,000mmを超えるなど、極めて雨が多い地域となっています。この豊かな降水量を活かして古くからスギやヒノキの植林が行われ、特に「吉野杉」などは高品質な建築材として全国に流通する林業の拠点となりました。
歴史・文化的には、その険しい地形から山岳修行の場とされてきた歴史があり、高野山や熊野三山、吉野・大峯といった霊場が形成されました。2004年には、これらの霊場とそれらを結ぶ「熊野古道」などの参詣道が「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。これは自然景観と人間の宗教文化が融合した「文化的景観」として高く評価されており、日本の伝統的な精神文化を今に伝える重要な地域となっています。
コラム
地質学的には「付加体」と呼ばれる複雑な構造を持ち、中央構造線の南側に位置します。紀伊山地が高い障壁となることで、南方からの湿った空気を遮断し、周辺の瀬戸内海式気候や淀川流域の環境形成にも影響を与えています。また、急峻な地形ゆえに平地が少なく、古くから沿岸部と山間部を結ぶ参詣道が交通の要所となってきました。