- 縮尺
- 実際の距離を地図上に縮小して表した比率
- 地図上の距離と実際の距離の比率であり、一般に分数や比の形式で示される
- 分母の数値が小さいほど詳細な情報を掲載する「大縮尺地図」と呼ばれる
- 地形図の読解において、実際の距離や面積、傾斜の度合いを算出するための基礎となる
解説
縮尺は、実際の地表の距離を地図上にどれだけ縮めて描くかを示す指標です。日本の国土地理院が発行する地形図では、主に1/25,000(2万5千分の1)や1/50,000(5万分の1)が標準的に用いられます。縮尺の大小によって、地図が持つ特性や用途は以下のように異なります。
| 項目 |
大縮尺地図 |
小縮尺地図 |
| 代表的な縮尺 |
1/2,500、1/25,000 |
1/50,000、1/200,000 |
| 描かれる範囲 |
狭い |
広い |
| 内容の詳細さ |
詳しい(建物や細街路を表示) |
概括的(都市や主要幹線を表示) |
| 分母の数値 |
小さい |
大きい |
実際の距離を算出する際は、図上の長さに縮尺の分母を乗じます。例えば、1/25,000の地形図上で4cmの長さは、4cm × 25,000 = 100,000cm = 1kmとなります。同様に、1/50,000の地形図では2cmが1kmに相当します。また、面積を求める場合は縮尺の2乗が比率となるため、1/25,000の地図上の2cm四方(4平方センチメートル)は、実際には500m × 500m = 0.25平方キロメートルとなります。
コラム
歴史的には、江戸時代の伊能忠敬が作成した「大日本沿海輿地全図(伊能図)」が、近代的な縮尺概念を用いた先駆的な事例です。当時、ロシアなどの外国船が日本近海に出没し始めたため、江戸幕府は国防上の観点から正確な海岸線の把握を急務としていました。伊能忠敬は用途に応じ、大図(1/36,000)、中図(1/216,000)、小図(1/432,000)の3種類の縮尺を使い分けました。なお、伊能図は海岸線と街道を主眼に測量されたため、内陸の山間部などは一部不正確な箇所も見られます。
また、縮尺は等高線の間隔とも密接に関係しています。1/25,000地形図では10mごとに主曲線が引かれますが、1/50,000地形図では20mごとになります。近年のデジタル地図(地理院地図など)では、画面上で縮尺をシームレスに変更できるほか、指定した2地点間の断面図を自動作成して土地の傾斜を確認したり、特定の範囲の面積を即座に算出したりすることが可能であり、防災や都市計画の現場で不可欠なツールとなっています。