知る権利とは、主権者である国民が政治的な意思決定や主権の行使を適切に行うために必要な情報を、国や地方自治体などの行政機関に対して請求し、取得することができる権利のことです。日本国憲法第21条が保障する「表現の自由」から導き出される「新しい人権」の一つとして、現代の民主主義社会において極めて重要な役割を担っています。
新しい人権, 情報公開法, 表現の自由, 国民主権, プライバシーの権利
解説
現代の民主主義社会において、主権者である国民が政府の活動を正しく監視し、自らの意思を政治に反映させるためには、行政が保有する情報を正確に把握することが不可欠です。本来、憲法第21条が定める「表現の自由」は、個人が意見を外部へ発信する側面に焦点が当てられていましたが、社会が高度に情報化し複雑化する中で、情報を受け取る側や、行政が独占する情報を積極的に求める側の権利も保障されるべきだという考え方が定着しました。
この「知る権利」を法的に具体化したものが、1999年に制定された「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」です。これにより、誰もが行政文書の開示を請求できるようになり、政府の透明性が向上しました。リンカーンが唱えた「人民の政治」という理念を実現するためには、国民が政治の情報を共有していることが前提となります。情報の出し手である行政側の都合で公開・非公開が決まるのではなく、受け手である国民が必要な情報を手に入れるための法的根拠として、この権利は民主主義を健全に機能させる基盤となっています。
コラム
知る権利は、しばしば個人の「プライバシーの権利」と対立することがあります。公的な情報の開示は社会全体の利益(公益)にかなうものですが、その情報の中に個人の私生活に関わるデータが含まれる場合、どちらを優先すべきかの調整が法律や裁判によって行われます。
また、マスメディアによる報道の自由も、この国民の「知る権利」を実質的に支える重要な役割を果たしています。国民は新聞やテレビなどのメディアを通じて政府の動きを知り、それをもとに選挙などで意思表明を行います。近年では、インターネット上の膨大な情報の中から正しいものを見極め、フェイクニュースに惑わされずに情報を活用する「メディアリテラシー」の能力も、知る権利を真に行使する上で欠かせない要素となっています。