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まとめ
『見返り美人図(みかえりびじんず)』は、江戸時代前期を代表する絵師、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)によって描かれた肉筆浮世絵です。鮮やかな紅色の着物を身にまとった女性が、歩みを止めてふと後ろを振り返る姿を美しく捉えた作品であり、日本美術史における美人画の代表的な一作として知られています。
解説
この作品を制作した菱川師宣は、それまで本の挿絵に過ぎなかった絵を一つの芸術鑑賞作品へと昇華させ、「浮世絵の祖」と呼ばれています。本作は木版画ではなく、絹の布に直接筆で描かれた「肉筆画(にくひつが)」という手法が用いられており、当時の最新のファッションであった「玉結び」の髪型や、細かく豪華な刺繍が施された着物の描写には目を見張るものがあります。
また、女性が描くS字型の柔らかな曲線は、一瞬の動きの中に潜む優雅さを表現しており、江戸時代の人々が憧れた理想的な女性美を象徴しています。この時代は「元禄(げんろく)文化」と呼ばれ、松尾芭蕉の俳句や、近松門左衛門による人形浄瑠璃といった庶民の文化が急速に発展した時期でもありました。見返り美人図は、そうした活気あふれる町人文化の成熟を背景に誕生した傑作です。
コラム
本作は現在、東京国立博物館に所蔵されています。1948年には、日本の切手趣味週間にちなんで発行された記念切手のデザインに採用され、その美しさが広く一般に知れ渡るきっかけとなりました。なお、作者の師宣は現在の千葉県安房郡にあたる地域の出身であり、地元には彼の業績を称える「菱川師宣記念館」が設置されています。作品の細部を観察すると、当時の帯の結び方の一つである「吉弥(きちや)結び」が描かれている点も、歴史的風俗を知る上で重要な資料となっています。
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