請願権とは、国や地方公共団体などの公的機関に対し、損害の救済、法律の制定・改正・廃止、公務員の罷免などを平穏に願い出る権利のことである。日本国憲法第16条で保障されており、主権者である国民が直接的に政治や行政へ関与することを可能にする参政権的権利、あるいは国に一定の行為を求める国務請求権としての側面を持つ。
解説
請願権の最大の特徴は、その行使主体が「何人(なにびと)」とされている点にある。これにより、選挙権を持たない未成年者や日本に在住する外国人も、正当な手続きを通じて公の機関に要望を伝えることが認められている。具体的には、請願法に基づき書面を提出することで行使される。憲法第16条では、請願の内容として損害の救済や公務員の罷免、法律の制定などが例示されているが、これらに限定されず、公務員の選定や罷免が国民固有の権利であるという考え方に基づき、広く民意を反映させる手段となる。
請願を受けた機関は、それを誠実に処理する義務を負うが、あくまで受理して検討することが義務であり、請願者の要望通りに結果を出すという「法的拘束力」までは発生しない。しかし、第12条に記された「不断の努力によって権利を保持する責任」や、第13条の「個人の尊重」を根底に持つ民主主義社会において、国民の声を直接届ける仕組みは極めて重要である。また、請願を行ったことによって不当な差別待遇を受けることも禁止されており、自由な意思表示が制度的に担保されている。
コラム
請願権は、裁判を受ける権利(第32条)や国家賠償請求権(第17条)とともに「受益権(国務請求権)」として分類されることが多い。これは、個人の自由を守る「自由権」や政治に参加する「参政権」を実質的に機能させるための、いわば手続き的な権利といえる。各権利は第12条から第20条において展開されており、最終的には「公共の福祉」による調整を受ける関係にあるが、請願権自体は平穏に行われる限り、民主主義を補完する強力な権利として機能する。