日本国有鉄道(略称:国鉄)は、1949年から1987年まで日本の国有鉄道事業を経営していた公共企業体です。それまで運輸省が直接運営していた鉄道事業を切り離し、独立した会計を持つ法人として設立されました。全国的な鉄道網を一手に担っていましたが、現在は分割・民営化され、JRグループ各社がその事業を継承しています。
解説
国鉄は第二次世界大戦後の日本において、輸送インフラの柱として経済復興を支える役割を果たしました。1964年には東海道新幹線を開業させ、日本の高い鉄道技術を世界に知らしめました。しかし、1960年代後半から自動車の普及や航空機の利用拡大が進むと、相対的に鉄道のシェアが低下し、採算の取れないローカル線の維持が経営を圧迫するようになりました。
さらに、巨大組織ゆえの効率の悪さや膨大な人件費、そして激しい労使紛争が重なり、国鉄の経営状態は急速に悪化しました。1980年代には累積債務が天文学的な数字に達し、国家財政を脅かす深刻な社会問題となりました。このため、当時の政府は経営改善を目的として1987年4月1日に国鉄を地域ごとの旅客6社と貨物1社に分割し、民営化を断行しました。
コラム
民営化後のJRグループは、民間企業として鉄道事業以外の多角化経営が可能になりました。現在では「エキナカ」と呼ばれる駅構内での商業施設展開やホテル事業、不動産開発などを積極的に行い、安定した収益基盤を築いています。
一方、国鉄が残した約37兆円にものぼる莫大な債務は、JR各社が一部を承継したほか、多くは国が保有する土地の売却などで返済が進められましたが、最終的には国民負担によって処理された部分も多く残りました。これは巨大な公共組織を民間組織へと転換する際の大変な困難さを象徴する出来事といえます。