江戸時代に発達した庶民向けの風俗画で、特に18世紀後半に登場した多色刷りの木版画(錦絵)を指します。絵師、彫師、摺師による高度な分業体制を確立したことで、安価かつ大量に生産され、江戸の町人文化を象徴するメディアとして普及しました。
解説
浮世絵の「浮世」とは「現代風」「当世の」という意味であり、当時の人々が関心を寄せる美人画、役者絵、あるいは名所図などが主な主題となりました。初期は墨一色の「墨摺絵」でしたが、1765年頃に鈴木春信らによって多色刷りの技法が完成し、極彩色豊かな「錦絵」へと進化しました。
制作過程では、版元(プロデューサー)の企画のもと、絵師が下絵(版下絵)を描き、彫師がそれを山桜の版木に彫り、摺師が何度も色を重ねて刷り上げるという分業システムが採られました。この産業化により、1枚あたりの価格を蕎麦1杯分(約20文)程度に抑えることが可能となり、江戸の庶民層に爆発的に普及しました。農業や商業の発展、五街道や航路の整備といった社会インフラの充実が、この文化の広がりを後押ししました。
コラム
江戸時代後半の化政文化期には、葛飾北斎や歌川広重による風景画が人気を博し、庶民の旅行ブームを支えました。また、明治以降に海外へ渡った浮世絵は、ゴッホやモネなどの印象派画家に強い衝撃を与え、「ジャポニスム」という世界的な文化現象を引き起こしたことでも知られています。