経度とは、イギリスの旧グリニッジ天文台を通る「本初子午線」を0度とし、地球上の東西の位置を180度までの数値で表した指標である。地球を球体として捉えた際の縦の座標軸にあたり、緯度とともに地球上の任意の地点を特定するために不可欠な概念である。
解説
経度は、地球の自転運動と密接に関連しており、世界の「時刻」を決定する物理的な根拠となる。地球は24時間で360度回転するため、経度が15度変化するごとに1時間の時差が生じる。この仕組みに基づき、各国は特定の経線を基準とした「標準時」を定めている。日本においては、兵庫県明石市を通過する東経135度が「日本標準時子午線」として採用されており、本初子午線が通るイギリス(世界標準時:UTC)と比較して9時間の進みが生じている。
また、地図投影法における経線の描かれ方は、その地図の用途を決定づける。メルカトル図法では経線と緯線が直交する直線で描かれるため、方位が一定の「等角航路」の確認に適している。しかし、地球上の最短距離(大圏航路)を確認するには、正距方位図法が適している。例えば、メルカトル図法上で東京から真東へ向かうと南アメリカ大陸に到着してしまうが、正距方位図法が示す北東方向へ進むことが実際には最短ルートとなる。これは、球体表面における経緯度の幾何学的な特性を反映した結果である。
さらに、経度は日の出の時刻を左右する重要な要因である。同じ緯度であれば東に位置する地点ほど太陽が早く昇る。日本国内で最も早く初日の出を観測できる地点は、日本の東端である南鳥島であるが、日の出は経度だけでなく「緯度(冬は南ほど早い)」や「標高(高いほど早い)」の影響も受ける。そのため、四大島の平地では千葉県の犬吠埼、山頂を含めれば富士山頂といったように、条件によって「最も早い」場所が異なる点は地理学的にも興味深い。
コラム
歴史上、緯度は太陽や北極星の高度を測ることで比較的容易に特定できたが、経度の測定は極めて困難であった。海上で正確な経度を知るには「基準地点との正確な時刻の差」を保持し続ける必要があったが、振り子時計などは船の揺れや温度変化に弱かったためである。18世紀、イギリスの時計職人ジョン・ハリソンが、過酷な海上環境でも狂わない高精度時計「クロノメーター」を開発したことで、正確な経度測定と安全な遠洋航海が可能となった。現代では、複数のGPS衛星からの電波を受信し、その時間差を計算することで、地球上の正確な経緯度を即座に特定できる環境が整っている。