まとめ
核兵器禁止条約(TPNW)は、核兵器の開発、実験、製造、保有、そして使用や使用による威嚇までを、全面的かつ法的に禁止する初めての国際条約です。2017年に国連で採択され、2021年に発効しました。従来の条約が核兵器の数を制限したり、特定の国だけに保有を認めたりしていたのに対し、この条約は核兵器そのものを「人類にとって非人道的なもの」として、完全に違法化している点が大きな特徴です。
解説
これまで国際的な核軍縮の中心となっていたのは「核不拡散条約(NPT)」でした。NPTはアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5カ国だけに核保有を認める一方で、他の国々が核を持つことを禁じる不平等な側面がありました。これに対し、核兵器禁止条約は、核兵器を持たない国々やNGOが主導し、核兵器の壊滅的な影響を重く見て、保有国も含めたすべての国に全面禁止を迫る内容となっています。
しかし、この条約には課題も残されています。アメリカやロシアなどの核保有国、およびその同盟国である北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本などは、この条約に参加していません。背景には、自分の国が核を持たなくても、同盟国の核兵器によって相手の攻撃を思いとどまらせる「核抑止力」という考え方があります。このため、理想を掲げる禁止条約側と、現実的な安全保障を重視する保有国側との間に深い溝が生じています。
この条約の成立に大きく貢献したのが、国際NGOである「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」です。ICANは、広島や長崎の被爆者の証言を世界に広め、核兵器の非人道性を訴え続けた功績により、2017年にノーベル平和賞を受賞しました。
歴史を振り返ると、1954年には太平洋のビキニ環礁での水爆実験により日本の漁船「第五福竜丸」が被爆し、1962年には米ソの対立から核戦争寸前となった「キューバ危機」が起きるなど、核兵器の脅威は常に世界を揺るがしてきました。唯一の戦争被爆国である日本は、この条約に署名していませんが、被爆者の方々を中心に条約への参加を求める声は今も強く上がっています。
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