15世紀半ばの朝鮮王朝(李氏朝鮮)で、民衆が容易に読み書きできるように制定された朝鮮語独自の文字体系。現在の大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国において公用語として使用されている。
室町時代の社会と外交李氏朝鮮世宗訓民正音朝鮮半島日朝貿易
解説
ハングルは、1443年に朝鮮王朝第4代国王である世宗(セジョン)によって創製され、1446年に「訓民正音(くんみんせいおん)」の名で公布された。当時の朝鮮半島では公的な表記に漢字が用いられていたが、習得が困難なため知識層以外に普及せず、一般の民衆は文字による意思疎通が難しい状況にあった。これを解消するため、世宗は学者たちとともに、習得しやすく論理的な文字を考案した。
構造としては、母音と子音のパーツを組み合わせて一つの音を表す「音素文字」であり、母音は天地人を、子音は発音器官の形をモデルに作られたとされる。この科学的で合理的な文字体系は、東アジアの文化交流が進む中で独自のアイデンティティを確立する大きな役割を果たした。室町時代の日本との交流(日朝貿易)が盛んだった時期に誕生した、朝鮮独自の優れた文化遺産といえる。
コラム
制定当初は「訓民正音」と呼ばれ、後に「ハングル(偉大な文字の意)」と称されるようになった。長らく漢字を重んじる両班(特権階級)からは軽視される傾向にあったが、19世紀末以降にその価値が再評価され、近代教育の普及とともに国家の象徴的な文字として定着した。
なお、室町時代の日本との関係では、足利義満による倭寇の取り締まりを機に国交が安定し、朝鮮からは大蔵経(仏教経典)などがもたらされる一方で、日本からは銀や工芸品が輸出されるなど、活発な文化・経済交流が行われていた。